
個人事業主には、サラリーマンのような退職金がありません。老後の資金は自分で用意する必要があります。そんな個人事業主や中小企業を支援する国の制度として、「小規模企業共済」があります。
小規模企業共済は、節税しながら退職金を用意することができる、デメリットの少ないお得な制度です。
小規模企業共済とは
小規模企業共済は、中小企業基盤整備機構(中小機構)が運営する共済制度です。
※公式ページはこちら→【中小機構】小規模企業共済
小規模企業共済は、個人事業主や中小企業の事業主が、自分の退職金を積み立てるための共済です。
小規模企業共済のメリット
小規模企業共済には以下のメリットがあります。
1. 少額から積み立て可能
2. 掛け金が所得控除の対象になる
3. 掛け金が増えて戻ってくる
1. 少額から積み立て可能
小規模企業共済の掛け金は、月額1,000円~7万円の範囲で自由に選ぶことができます(500円刻み)。少額から積み立てが可能なので、無理なく始めることができます。
2. 掛け金が所得控除の対象になる
掛け金は、所得控除の対象になります。つまり、退職金を積み立てながら節税対策も出来るのです。
3. 掛け金が増えて戻ってくる
掛け金を払い戻す時には、定められた共済金が戻ってきます。例として、掛金が月額1万円の場合、戻ってくる共済金は以下の表の通りです。
掛金納付年数 5年(掛金合計:60,0000円) 共済金A 621,400円 共済金B 614,600円 準共済金 600,000円
掛金納付年数 10年(掛金合計:1,200,000円) 共済金A 1,290,600円 共済金B 1,260,800円 準共済金 1,200,000円
掛金納付年数 15年(掛金合計:1,800,000円) 共済金A 2,011,000円 共済金B 1,940,400円 準共済金 1,800,000円
掛金納付年数 20年(掛金合計:2,400,000円) 共済金A 2,786,400円 共済金B 2,658,800円 準共済金 2,419,500円 ※【中小機構】小規模企業共済より引用
共済金の種類は以下です。
共済金等の種類 請求事由 共済金A ・個人事業を廃業した場合(※1)(※2)
・共済契約者の方がなくなられた場合共済金B ・老齢給付(65歳以上で180か月以上掛金を払い込んだ方) 準共済金 ・個人事業を法人成りした結果、加入資格がなくなったため、解約をした場合(※3) 解約手当金 ・任意解約
・機構解約(掛金を12か月以上滞納した場合)
・個人事業を法人成りした結果、加入資格はなくならなかったが、解約をした場合(※3)※1 複数の事業を営んでいる場合は、すべての事業を廃止したことが条件です。
※2 平成28年3月以前に、配偶者または子へ事業の全部を譲渡したときは、「準共済金」です。
※3 平成22年12月以前に加入した個人事業主が、金銭出資により法人成りをしたときは、「共済金A」となります。※【中小機構】小規模企業共済より引用
掛け金が増えて戻ってくると同時に所得税の節税効果もあるのですから、個人事業主にとっては銀行に預金するよりずっと賢い運用方法です。
※共済金A・Bを受け取れる条件は掛け金納付月数が6ヶ月以上、準共済金・解約手当金を受け取れる条件は掛け金納付月数が12ヶ月以上です。
解約手当金に注意!
事業が上手くいかなくなって廃業したり、逆に事業がとても上手くいって法人化した場合は、掛け金がちゃんと増えて(または同額)戻ってきます。
しかし、廃業や法人化の理由ではなく任意解約する場合には、元本割れする場合があります。
事業を継続しているのに共済金を支払えなくなったり、気が変わって共済を止めたくなったりなど、自己都合での解約による払い戻しは、共済金ではなく解約手当金になります。
掛け金納付月数が240ヶ月(20年)未満で任意解約した場合は、返戻金が元本割れします。
小規模企業共済のデメリット
小規模企業共済には以下のデメリットがあります。
1. 6ヶ月間以上の掛け金納付が必要
2. 廃業・法人化等の理由以外で任意解約すると元本割れ
3. 返戻金に税金がかかる
1. 6ヶ月間以上の掛け金納付が必要
小規模企業共済の共済金を受け取れる条件は、以下です。
・共済金A・Bの場合、掛け金納付月数が6ヶ月以上
・準共済金・解約手当金の場合、掛け金納付月数が12ヶ月以上
デメリットと言っても、半年間または1年間以上納付していればOKなので、厳しい条件ではありません。
インターネット上で小規模企業共済について検索すると「掛け金を20年以上納付しないと元本割れする」という記述を見かけます。「20年も払い続けるなんて無理!」と思ってしまいます。しかしこれは、あくまで任意解約した場合です。
「事業が上手くいかなくなって廃業した」「上手くいきすぎて法人化した」という場合には、元本割れするリスクはほとんど無いと言って良いでしょう。
2. 廃業・法人化等の理由以外で任意解約すると元本割れ
廃業や法人化以外の理由で任意解約すると、掛け金納付月数が240ヶ月(20年間)未満の場合は元本割れします。
小規模企業共済に加入する際には、任意解約する可能性があるかどうかを検討する必要があります。
3. 返戻金に税金がかかる
小規模企業共済は、個人事業主や中小企業経営者の為の退職金制度です。返戻金は退職金扱いになるので、受け取り時には税金がかかります。

退職金の税金の計算方法
退職金にかかる税金は、普通の所得税の計算方法と異なっています。
退職金には、退職金所得控除という嬉しい控除があります。
勤続年数 退職所得控除額 20年以下 40万円×勤続年数 20年超 800万円+70万円×(勤続年数-20年) ※退職金控除額が80万円に満たない場合は、退職金控除額を80万円とする。
※引用:【国税庁】退職金と税
退職金に掛かる税金の計算方法は、以下です。
退職金に掛かる税金 = (退職金の額 ー 退職金所得控除額)× 1/2 × 税率
小規模企業共済の返戻金に税金がかかるのはデメリットですが、退職金扱いになることはメリットです。
退職金が少なければ非課税に!
小規模企業共済の返戻金を退職金として受け取った場合にどのくらいの税金が掛かるのでしょうか。
例として、毎月1万円の掛け金を20年間払い続けた場合の退職金に掛かる税金を計算してみました。
受け取れる共済金A = 278万6,400円
退職所得控除額 = (40万円 × 20年) = 800万円
退職金に掛かる税金 = 0円
※退職金控除額が退職金を上回っている場合、退職金所得に掛かる税金は0円です。
少額の積み立てなら、積み立てたお金は毎年の所得税から控除出来る上に、返戻金は非課税で戻ってきます。
小規模企業共済に加入する際には、掛け金の金額・所得控除による毎年の節税効果・返戻金の金額・返戻金に掛かる税金を計算してみて、自分にとって得か損かを考えてみると良いでしょう。
加入シミュレーションを使ってみよう!
中小機構では、毎月の掛け金と支払い年数から、払い戻される共済金の金額と節税額を計算できるツールを公開しています。
このツール、分かりやすくてとても便利ですよ!試しに試算してみましょう!↓
デメリットの少ない小規模企業共済は、個人事業主にお勧め
小規模企業共済は、共済金の返戻率が大きくて元本割れのリスクが少ない制度です。個人事業主の節税対策にとても良いと思います!
ママの事業、廃業の危機だから今は止めとく!
最近の私の収入は、残念なことに低迷中・・。もっと収入が安定して仕事が上手くいくようになったら、ぜひ加入したい共済制度です。