最近のニュースを賑わせている、老後資金2,000万円問題。
まるで金融庁が「年金はもうダメだ!」とさじを投げたかのように報道されていますが、該当の資料を読んでみたらとても興味深く面白い内容でしたよ。
老後資金2,000万円問題
金融庁が発表した金融審議会市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」の「年金だけでは豊かな老後は送れない、年金の他に夫婦で2,000万円の資金が必要だ」という報告。
「年金を払っている意味が無い!」と怒る人もいるかもしれませんが、多くの人は「やっぱりね。年金だけじゃ足りないよね。」と納得した報告書だったと思います。
(麻生さんがこの報告書の受け取り拒否を表明し、意味不明なことになっていますが。調査した結果の事実なんだから、今さら隠す意味がわかりません。)
「人生100年時代」のリスク
非正規雇用が増え個人所得が減る一方で物価や税金は上がり、終身雇用も望めなくなりつつある現代。それなのに医療の進歩で平均寿命は延び「この長い人生を一体どうやって生きていったら良いのだろうか?」と誰もが考えたことがあると思います。
私の場合は、この状況に加えてなんと昨年、進行性の難病を発症してしまいました。幸い今のところ病状は軽症ですが、企業に就職して働くのは難しい状況です。
「人生100年時代」とは言っても、誰もがずっと健康で働けるわけではないんですよね。どんな人も病気や怪我のリスク、地震などの天災によるリスクを背負っています。
「その沢山のリスクを全て社会制度で保障しよう」というのは無理な話です。そんなことをしたら税金がものすごい金額になってしまうでしょう。
自分と家族を守るために、年金などの社会制度に頼らない自分の努力は必要だと思います。
「でも一体、どう努力すれば良いのか?」「どうすれば将来の不安が無くなるのか?」という疑問に対するひとつの回答が書かれているのが、この報告書です。
マスコミは「年金だけでは足りない、自助努力で2,000万円が必要だと金融庁がついに認めた」というような報道をしていますよね。でもこの報告書は年金制度の失敗を露呈するものではなく「人生100年時代の不安にどう対応するか、対応方法の提案」が書かれた文書です。
老後資金2,000万円問題の対応策
該当の報告書(金融審議会市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」)では、老後問題についての対応策として、ライフステージごとに以下を挙げています。
現役期
若くて働いている現役世代に考えられる対応策として、以下が挙げられています。
・早い時期からの資産形成の有用性を認識する。
・預貯金のほかに、少額からでも長期・積み立て・分散投資による資産形成を行う。
・自らにふさわしいライフプラン・マネープランを検討する(必要に応じて信頼できるアドバイザー等を見つけて相談する)。
・金融サービス提供者が顧客側の利益を重視しているかという観点から、長期的に取引できる提供者を選ぶ。
具体的には「つみたてNISA」や「iDeCo」による資産形成支援を挙げています。また、必要に応じてこれらの制度の改善も考えていくべきだと述べられています。
我が家も、子供が産まれた頃から資産運用を始めました。きっかけは、保険の見直しを依頼したファイナンシャルプランナーさんに「貯蓄だけではなく、投資もするべきです。」と勧められたことです。
夫が色々な書籍から投資の勉強をして、少額を積み立てる投資を行っています。投資にはリスクもあるので、資産は増えることもあれば減ることもあります。しかし、長い目でみて最終的に貯蓄よりプラスになっていればOKというスタンスで続けています。
夫は、主に山崎元さんの著書を参考にしているようです。
リタイヤ期前後
退職が近づいた時の準備について、以下が挙げられています。
・退職金がある場合、早期の情報収集と使途の検討及び退職金を踏まえたライフプラン・マネープランを再検討する。
・必要に応じ、収支の改善策を実行する。
・長い人生を見据えた、中長期的な資産運用の継続(長期・積立・分散投資等)とその後の計画的な取崩しを実行する。
公務員や大企業に勤めている人なら「退職金がたくさんもらえるから老後の心配なんてない」という人もいるかもしれませんね。自分の退職金は一体いくらなのか、早めに確認しておきましょうということが書かれていました。
私のような個人事業主やフリーランスの人は、退職金がありません。この先もずっと個人事業を続けていくのなら、退職金を自分で用意することも考えた方が良いかもしれませんね。
私ももう少し収入が安定するようになったら、考えてみようと思います。
高齢期
認知症が始まってしまったり病気の可能性も予測しつつ、計画を立てて行動すべきとしています。
・心身の衰えを見据えてマネープランを見直す(医療費、老人ホーム入居費等)。
・認知・判断能力の低下や喪失に備え、取引関係の簡素化など心身の衰えに応じた対応をしやすくする。
また、金融面の本人意思を明確にしておき、自ら行動できなくなったとしても、他者のサポートにより、これまでと同様の金融サービスを利用しやすくしておく。
まだまだ先の話・・と思ってしまいますが、いずれは直面する問題です。今の私は、自分のことよりも自分の親について考え始めなければならない時期かもしれません。
まとめ
この報告書のまとめとしては、こんな風に書かれています。
これを見据えて、今何ができるか、何をすべきか。
標準的なモデルが空洞化しつつある以上、唯一の正解は存在せず、各人の置かれた状況やライフプランによって、取るべき行動は変わってくる。
今後のライフプラン・マネープランを、遠い未来の話ではなく今現在において必要なこと、「自分ごと」として捉え、考えられるかが重要であり、これは早ければ早いほど望ましい
公的な場に留まらず、シンポジウムなどの場、さらには周りの者ともこの問題を話し合い、皆で高齢社会における資産形成・管理や金融サービスのあり方に対する知見を深めていくことを通じて、対応のあり方が進化していくものと考えられる。
この報告書が契機の一つとなり、幅広い主体に課題認識等が共有され、各々が「自分ごと」として本テーマを精力的に議論することを期待している。
年金がどうこうという問題ではなく、今の時代に生きている私達がより良い人生を作っていくために出来ることはなにか、「自分のこと」として考えなければならないという提言です。
自分のため、家族のために出来ること
この報告書を読んで、私は「自分が今置かれている状況の中で、自分の未来のため、家族の未来のためにできることは何だろう」と考えさせられました。私には病気もありすぐに答えが出せる状況ではありませんが、自分なりの答えを探したいと思います。
人生は予想していた以上に波瀾万丈です。置かれている状況はどんどん変わるし、答えを見つけるのはとても難しいです。でも自分が持っているものや出来ることに目を向けて、自分の進むべき方向を考えていきたいと思います。