
納税者である夫の配偶者として、税金や社会保険の優遇を受けられる範囲で働くという意味です。
「扶養」という言葉でまとめて言われることが多いのですが、「扶養」には2種類あります。
税金(所得税・住民税)の優遇が受けられる「配偶者控除」と、社会保険(健康保険・年金)の優遇が受けられる「社会保険の扶養」です。
扶養には2種類ある
よく「扶養の範囲で働く」という言い方をしますが、「扶養」には2種類あります。税金(所得税・住民税)の扶養と、社会保険(健康保険・年金)の扶養です。
税金(所得税・住民税)の扶養
収入の少ない配偶者がいる場合、納税者(注1)の税金が優遇される制度が配偶者控除です。
配偶者控除が適用される税金には、所得税と住民税があります。
所得税の配偶者控除
所得税の配偶者控除についての詳細は【国税庁】配偶者控除に記載されていますが、簡単にまとめると、「納税者(注1)は配偶者の年間収入(注2)が103万円以下の場合、配偶者控除を受けることができる」という制度です。
※配偶者控除については当ページ内のこちらをご参照下さい。→2.2所得税の配偶者控除とは
年間収入が103万円以下なら、配偶者自身は所得税を支払う必要がありません。また、納税者は所得税の配偶者控除を受けることができます。
(注1)納税者とは、家族の中で主に税金を納めている人のこと。配偶者とは、納税者と婚姻関係にある人のこと。
(注2)年間収入とは、給与収入の場合は給与、事業収入の場合は(売り上げ)-(経費)のこと。
103万円の壁とは
所得税の配偶者控除は、配偶者の年間収入が103万円以下の場合に受けられる特典です。
そのため、パートなどで働く時間を調整し、年間収入103万円以下で働こうとする人が多くいるため「103万円の壁」と呼ばれています。
所得税の配偶者控除とは
所得税の配偶者控除とは、納税者の所得から38万円が控除される制度のことです(納税者の年間収入が1,120万円(所得900万円)以下の場合)。所得が控除されると、その分の所得税が安くなります。
所得税の減税額は、(所得)×(税率) で求めます。
税率は、納税者の年間収入に応じて決められています。→【国税庁】所得税の税率
例として、納税者の年間収入が500万円の場合を考えてみましょう。
納税者の年間収入が500万円の場合、税率は20%。
配偶者控除38万円が適用された場合の減税額は、
38万円 × 20% = 7万6,000円
所得税の配偶者特別控除とは
所得税の配偶者特別控除とは、配偶者の年間収入が103万円を超えて201万円以下まで適用される所得控除のことです。
平成29年まで配偶者特別控除の範囲は、配偶者の年間収入が103万を超えて141万円以下まででした。平成30年からは201万円以下までに適用範囲が拡大されました。
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引用:【財務省】平成29年度税制改正(※引用元のページはいつの間にか削除されてました。分かりやすい図だから残して欲しかった・・。)
また、上の図を見ると分かるように、配偶者の年間収入が150万円以下なら控除額は103万円以下の場合と同じ、38万円です。
住民税の配偶者控除
住民税は、所得の申告を元に計算されて請求されます。住民税にも、配偶者控除・配偶者特別控除の制度があります。
住民税の配偶者控除についての詳細は、各自治体のホームページに記載されています。
(札幌市の場合は、こちら→【札幌市】税額の算出方法(個人市民税))
簡単にまとめると、「納税者(注1)は配偶者の年間収入(注2)が100万円以下の場合、配偶者控除を受けることができる」という制度です。
(注1)納税者とは、家族の中で主に税金を納めている人のこと。配偶者とは、納税者と婚姻関係にある人のこと。
(注2)年間収入とは、給与収入の場合は給与、事業収入の場合は(売り上げ)-(経費)のこと。
配偶者の年間収入が100万円以下なら、配偶者自身は住民税を支払う必要がありません。また、納税者は、配偶者の年間収入が103万円以下なら住民税の配偶者控除を受けることができます。
非課税額の上限が異なるため、所得税が非課税でも、住民税は課税対象となる場合があります。
住民税の非課税額上限は、自治体によって異なります。
多くの自治体では年間収入100万円以下が非課税ですが、年間収入93万円以下を非課税としている自治体もあります。
ご自身の自治体ホームページでご確認下さい。
住民税の配偶者控除とは
住民税の配偶者控除とは、納税者の所得から33万円が控除される制度のことです(納税者の年間収入が1,120万円(所得900万円)以下の場合)。所得が控除されると、その分の住民税が安くなります。
住民税の減税額は、(所得)×(税率)で求めます。
住民税の税率は、一律10%で固定です。(市区町村民税の税率4%と都道府県民税の税率6%の合計)
例として、納税者の年間収入が500万円の場合を考えてみましょう。
納税者の年間収入が500万円の場合、税率は10%。
(※年間収入に関わらず、税率は10%固定)
配偶者控除33万円が適用された場合の減税額は、
33万円 × 10% = 3万3,000円
住民税の配偶者特別控除とは
住民税の配偶者特別控除とは、配偶者の年間収入が103万円を超えて141万円まで適用される所得控除のことです。
住民税の配偶者控除・配偶者特別控除
配偶者の年間収入 | 配偶者控除 | 配偶者特別控除 |
0~103万円以下 | 33万円 | – |
103万円超~110万円未満 | – | 33万円 |
110万円以上~115万円未満 | – | 31万円 |
115万円以上~120万円未満 | – | 26万円 |
120万円以上~125万円未満 | – | 21万円 |
125万円以上~130万円未満 | – | 16万円 |
130万円以上~135万円未満 | – | 11万円 |
135万円以上~140万円未満 | – | 6万円 |
140万円以上~141万円未満 | – | 3万円 |
141万円以上 | – | – |
参考:【札幌市】税額の算出方法
税金(所得税・住民税)の扶養、抜けるとどうなる?
103万円の壁を越えて、所得税や住民税の配偶者控除が受けられなくなっても、配偶者特別控除があるためあまり税負担は増えません。
家族手当の影響は大きい!
納税者は、勤務している会社から家族手当をもらっている場合が多いです。配偶者への家族手当は、月額1万8,000円ほど(会社規定による)。
配偶者の年間収入が103万円を超えると、家族手当が支給されなくなる会社がほとんどです。家計にとってこの影響はとても大きいです!
※家族手当について詳しくは、こちらの記事をご参照下さい。↓

社会保険の扶養
配偶者の収入が少ない場合、配偶者は納税者の社会保険の扶養に入ることができます。
配偶者が企業でパート労働者として働いている場合は月額賃金が8.8万円未満(※注3)、配偶者が個人事業主の場合は年間収入(※注4)が130万円未満の時、納税者の社会保険の扶養に入ることができます。
このとき、配偶者自身は健康保険料・年金を支払う必要がありません。
(注3)雇用条件によっては、パート労働者も130万円未満まで納税者の社会保険の扶養に入れる。
詳しい条件は、厚生労働省のホームページに記載されています。→【厚生労働省】社会保険の適用拡大
(注4)個人事業主の年間収入とは、(売り上げ)- (経費)のこと。ただし、社会保険の経費は所得税の経費とは異なり、納税者の会社が規定するものしか認められない。
パート労働者と個人事業主の違い
配偶者が企業で働くパート労働者の場合と、個人事業主の場合とでは社会保険の扶養に入る条件が異なります。
106万円の壁とは
企業でパート労働者として働く配偶者は、月額賃金が8万8,000円以上になると配偶者自身の企業の社会保険に加入します。ただし、収入以外にも必要な条件を満たしている場合に限ります。
この制度は、配偶者自身が企業の社会保険に加入することで社会保険料の負担が増えるため「106万円の壁」と呼ばれています。
社会保険の加入対象者
1. 1週間あたりの決まった労働時間が20時間以上であること
2. 1ヶ月あたりの決まった賃金が88,000円以上であること
3. 雇用期間の見込みが1年以上であること
4. 学生でないこと
5. 以下のいずれかに該当すること
①従業員が501人以上の会社で働いている
②従業員が500人以下の会社で働いていて、社会保険に加入することについて労使で合意がなされている
本当は105万6,000円の壁なんだけど、言いやすくして「106万円の壁」って言ってるみたいだよ。
130万円の壁とは
上記の「106万円の壁」の条件に当てはまらないパート労働者や個人事業主は、年間収入が130万円以上になると納税者の社会保険の扶養を抜け、配偶者自身が社会保険に加入する必要があります。
社会保険の負担は大きな金額になります。そのため、納税者の社会保険の扶養内で働こうとする人が多くいるため「130万円の壁」と呼ばれています。
社会保険(健康保険・年金)の扶養、抜けたらどうなる?
個人事業主の場合、社会保険の扶養を抜けた配偶者は、自分で国民健康保険と国民年金に加入する必要があります。
国民健康保険料は、前年の年間収入に応じて決定されます。前年の収入が少なければ、保険料は月額2,000円程度~。国民年金保険料は、月額16,490円(固定)です。
「103万円の壁」も超えていれば、さらに所得税分の収入減。さらに家族手当の月額1万8,000円の減給があるよ!
所得税の計算上の所得は、売り上げから経費・所得控除を引いたものです。
社会保険の計算上の所得は、売り上げから経費を引いたものですが、納税者の企業が定めるものしか経費として認められません。
そのため、所得税上の所得は103万円を超えていないけど、社会保険上の所得は130万円を超えてしまった、ということも有り得ます。
「130万円の壁」を超えることによる社会保険料の負担増は、年額30万円くらい。
これに、所得税・住民税の支払いがプラスされ、家族手当(月額1万8,000円程度)が減ってしまいます。
税金を乗り越えてがんばろう
私のような収入が不安定な零細個人事業主にとって、税金による収入減はとっても痛手です。
私は、こんな風に思ってしまうことがあります。
でもここで諦めてしまうと先に進めない。商売とは不安定なもの。売り上げを上げるべく努力を続けるしかないです。